高配当株投資をする際に1、2位を争うぐらい重要な「配当性向」。
今回は、配当性向について基本的なポイントをまとめていきたいと思います。
配当性向とは
配当性向とは、企業の配当姿勢を示す指標です。
より具体的には、企業の利益のうち何%を配当金に充てたのかを示す指標です。
配当性向の算出式
配当性向は以下の式で算出できます。
配当性向(%)= 1株配当金 ÷ 一株あたり純利益(EPS) × 100
たとえば、EPSが100で、その年の1株あたり配当総額が30円だった場合は、配当性向30%(30÷100×100)となります。
EPS(一株あたり純利益)については以下の記事で解説しています。
配当性向の目安
配当性向は、高過ぎず低過ぎずが良いと言われます。
具体的な数値としては、40%前後が良い塩梅という目安としてよく言われます。
もしくは30〜50%あたりの幅を持って、良しとされる場合もあります。
配当性向が重要な理由
配当性向が重要なのは、その企業の配当姿勢が推し量れることと、どれくらい頑張って配当金を出しているかわかるからです。
配当性向は企業の配当姿勢を反映
配当性向は、その企業の配当姿勢を色濃く反映します。
たとえば、配当性向が10%と低い場合は、その企業はあまり配当を重視していないと読み取れます。
一方で、配当性向が40%前後で良いとされる範囲であれば、配当による株主還元を重視していることがわかります。
配当性向が90%などかなり高い場合は、配当金を超重視していると言えるでしょう。
ただし、このように高すぎる場合は、次のポイントも見ておく必要があります。
配当性向は企業の配当努力を示す
配当性向は、配当姿勢だけではなく、その企業の努力量もわかります。
どちらかというとこちらの方が重要かもしれません
どういうことかというと、高すぎる場合はかなり無理して配当金を出している可能性があるのです。
たとえば、配当性向が120%など100%を超えている場合、その期の利益以上の金額を配当として株主に分配していることになります。
言うなれば、月収以上の金額のプレゼントを恋人にしているようなものです。(=貯金を取り崩してプレゼントしている)
このような状態を続けると、いずれ破産してしまうことは明白でしょう。
配当性向は、このように無理をして配当を出していないかを判断するための有益な指標となります。
配当性向を見る際の注意点
配当性向を見る際に注意する点は、主に以下の3つあります。
- 「高い配当性向=危険」ではない
- 「低い配当性向=還元姿勢に欠ける」ではない
- 配当性向はEPSに依存する
- キャッシュフローも合わせて確認する
それぞれ解説していきます。
注意点①:
「高い配当性向=危険」ではない
上記で、高い配当性向(たとえば100%を超える場合)は、無理して配当を出している可能性があり、いずれ破産するかもしれないとお伝えしました。
しかし、これはいつ何時もそうであるとは限りません。
というのは、企業の中期経営計画で、配当性向100%などの高い目標を掲げている場合があるからです。
配当性向100%目標の企業例
たとえば、三つ星ベルト(5192)は2023年3月期、2024年3月期の配当性向の目標は100%としていました。実際に、配当性向も100.4%(2023年)と99.8%(2024年)の実績となっています。
また、パイオラックス(5988)も、2023〜2025年の中期経営計画で配当性向100%を目標としています。当社は自己資本の積み増しの抑制を行うことが、理由の1つとして挙げられています。
配当性向100%を掲げる理由は企業ごとによって異なりますが、必ずしも無理して配当金を出していることによるものではないことがお分かりいただけるかと思います。
注意点②:
「低い配当性向=還元姿勢に欠ける」でもない
一方で低い配当性向が、その企業の株主還元姿勢が欠けていることでもないです。
配当金による還元は重視していない可能性は高いですが、株主への還元は配当金以外にも様々な方法があります。
たとえば、事業拡大のための投資によってより多くの売上や利益をあげることで株価の上昇を計るのは代表的な株主還元になります。もしくは自社株買いをすることも還元の1つです。
そういった方法を重視している企業は、利益を配当金ではなくそういった投資や使い方に割り振ります。
たとえば、AppleやGoogleなどは、配当金は最低限で株価上昇による株主還元を重視している企業として有名です。
配当性向が低いことは、あくまで配当による還元を重視していないというだけで、株主還元姿勢に欠けるわけではないということです。(還元姿勢に欠けるまたは還元する実力がない場合もありますが…)
注意点③:
配当性向はEPSに依存する
配当性向は、EPSで配当金を除算しているため、EPSの値に依存しています。
つまり、配当金額が同じでも、EPSが変化すれば配当性向は変化します。
たとえば、以下のような場合があります。
A社 | B社 | |
---|---|---|
配当金額 | 30円 | 30円 |
EPS | 100円 | 40円 |
配当性向 | 30% | 75% |
会社の利益が減った際に配当金を維持しようとすると、このように配当性向が高くなります。
つまり、配当性向を見るとその会社の業績の変動具合もある程度わかるのです。(「配当金額は前期と同じなのに、配当性向が異様に高くなっている=利益が減った」など)
逆に、配当性向が同じでも、配当金額が大きく変わる場合もあります。
配当性向は割合を示すため、これは当たり前と言えば当たり前ですが、念の為。
A社 | B社 | |
---|---|---|
配当金額 | 30円 | 15円 |
EPS | 100円 | 50円 |
配当性向 | 30% | 30% |
こちらの例は、配当性向の基準を掲げている場合に問題となりえます。というのも、たとえば配当性向を30%目標と掲げている場合に、思ったより稼げないと配当金を減配する可能性があるからです。
注意点④:
キャッシュフローも合わせて確認する
配当性向を見る際は、キャッシュフローも合わせて確認するのが良いです。
その理由は、配当性向はEPS(1株あたり純利益)に基づいて計算されますが、純利益と実際のキャッシュフローは必ずしも一致しないためです。
配当金は現金で支払われますが、その支払いを行うための現金が十分にある(支払い能力がある)かを確認することが重要になります。
見るポイントとしては、フリーキャッシュフローや現金等の項目で良いかと思います。
これらキャッシュによって配当金の支払いが裏付けられているかを注意して見ておきしましょう。
会社のキャッシュフローの状況を示す「現金等」については以下の記事で解説していますので、ぜひご参考ください。
>> 現金等について
高配当株投資における配当性向の立ち位置
高配当株銘柄を選ぶ際には、配当性向は非常に重要になります。
配当利回りの次に重要かもしれません。
その理由としては、これまで述べてきたように配当性向によって企業の配当還元姿勢と努力度合いがわかるためです。
配当性向は30〜50%ぐらいが心地よい
個人的には、配当性向は30〜50%前後が安定感があり、無理もしていない度合いな気がするので、好みです。
企業によっては、配当性向目標を掲げています。
掲げている目標自体も還元姿勢を見る上で重要ですが、その目標を達成しているのかを見ることも、銘柄選びの際に非常に重要になります。
目標を掲げることは誰でもできるので、実際にそれに伴った結果が出せているのかはその企業の実力や努力を判断するのに役立ちます。
努力度合いを推し量る
基本的に高い配当性向の場合は、長く持続しません。それは、頑張って配当を出している可能性が高いからです。
稀に非減配期間(減配していない期間)が十数年など長期な企業がありますが、配当性向が70〜80%など高くなっている場合は、あまり魅力的ではありません。
こういうパターンは、利益が上がっていないにもかかわらず、減配しないために必死に配当金額を維持している可能性が高いからです。
また、たとえ、企業の中期経営計画として配当性向100%が掲げられていたとしても、あまり魅力的ではありません。
というのも、経営計画の対象期間が終われば配当性向が落ちる(それに伴い配当金も低下する)可能性が高いからです。
つまり、その場合の配当金は一過性のものであり、今後長期的に維持されるわけではないため、想定している利回りが今後出なくなる可能性があります。
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