
TOBってたまに聞くけど、なんだろう?
そんな疑問を解決します。
TOBは株式投資をしている人にとって、大きなチャンスになり得る重要なイベントです。
この記事では、
- TOBってそもそも何?
- TOBで株価はどうなるの?
- 保有株がTOBの対象になったらどうすればいい?
- TOBを活用した投資戦略は?
といった疑問について、初心者の方にもわかりやすくお答えしていきます。
この記事を読めば、TOBの基礎知識が身につき、TOBが発表された際に慌てずに行動できるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
- TOBは株式を買い付けて、企業の買収や経営権を取得する方法の1つ
- TOBが発表されると買付価格まで株価が上昇する
- 保有株がTOBされた場合は売却するか否かを決める必要がある
- TOBをうまく活用すれば儲けるチャンスもある
TOBとは?株式公開買い付けの基本

TOBとは、「Take Over Bid(テイク・オーバー・ビッド)」の略で、日本語では「株式公開買い付け」といいます。
これは、企業が他の企業の株式を、市場外で、一定の価格で、一定の期間に、不特定多数の株主から買い付けることを指します。
例えば、A社がB社の株式を1株1,000円で、1ヶ月間、市場を通さずに買い取るといったケースがTOBです。

簡単に言うと、企業Aが「企業Bの株を、この値段で、この期間に売ってくれませんか?」って株主に呼びかけることですね!
TOBの目的は?
TOBの主な目的は、企業の買収や経営権の取得です。
A社がB社を子会社にしたい場合、B社の株式の過半数を取得する必要があります。
TOBは、そのための有効な手段の一つとして、よく用いられます。
また、A社がB社の経営に影響力を持つために、一定数の株式を取得したい場合にも、TOBが利用されます。

つまりは、ある企業に対して支配や影響力を持ちたい時に取られる戦略ですね。
TOBの種類(友好的TOBと敵対的TOB)
TOBには、大きく分けて友好的TOBと敵対的TOBの2種類があります。
名前から大体の意味は想像できるかと思いますが、友好的TOBは、買収対象企業の経営陣の同意を得て行うTOBです。
一方の敵対的TOBは、買収対象企業の経営陣の同意を得ずに行うTOBです。

友好的TOBは、両思いの結婚みたいなものですね。
反対に敵対的TOBは、ちょっと強引なアプローチって感じかな?
敵対的TOBの場合は、株が買われる側の企業が防衛策に出ることもあり、TOBが失敗に終わることもあります。
防衛策は、既存株主に安価で追加株式を購入する権利を提供して買収コストを上げたり、他の企業に友好的TOBを持ちかけたりと多岐に渡ります。
TOBの手続きの流れ
TOBは、以下のような流れで進められます。
- 公開買付開始公告
TOBを行う企業(買付者)が、TOBの目的、買付価格、買付期間などを公告します。 - 公開買付届出書の提出
買付者は、金融庁に公開買付届出書を提出します。 - 意見表明報告書の提出
買収対象企業の取締役会は、TOBに対する意見表明報告書を提出します。 - 公開買付期間
株主は、買付者に対して株式の売却を申し込みます。 - 公開買付結果の公告
買付者は、TOBの結果を公告します。 - 決済
株式の受け渡しと代金の支払いが行われます。

簡単にまとめると、「TOB発表→株式の買付→TOB完了」という流れですね。
我々投資家は、届出や意見表明報告書の提出などは気にしなくて良いでしょう。
TOBが株価に与える影響は?事例でわかりやすく解説

一般的に、TOBが発表されると、買収対象企業の株価は上昇します。
これは、買付価格が市場の株価よりも高く設定されることが多いからです(TOBプレミアム)。
TOBプレミアムとは、買付価格が市場の株価よりもどれだけ高いかを示すものです。
例えば、市場の株価が1,000円で、買付価格が1,200円の場合、TOBプレミアムは20%となります。
このようなTOBプレミアムがある場合は、基本的には公表されている買付価格まで株価は上昇します。

普段100円で売っているものが、120円で買い取ってもらえるってことだから、株価が上がるのは当然ですね!
TOBの事例:ベネッセホールディングス(2023年)
では、実際に過去のTOBの事例から株価への影響について見てみましょう。
ベネッセホールディングス(以下、ベネッセHD)は、教育・介護事業などを展開する大手企業です。

私の世代だと「赤ペン先生」で知っている人も多いかもしれません。
しかし、少子化や競争激化により、業績は伸び悩んでいました。
そこで経営陣は、TOBして非公開化(株式を上場廃止)することにより、短期的な業績にとらわれず、長期的な視点での経営改革を迅速に進めることを目指しました。
そして2023年末にベネッセHDの経営陣と、スウェーデンの投資ファンドEQTの関連会社が共同でTOBを発表。
TOB価格は1株2,600円で、TOB発表前の株価(約2,000円)から約30%のプレミアムがつきました。
発表後の株価は一気に2600円付近まで跳ね上がっています。

その後2024年2月末にTOBは成立し、ベネッセHDは上場廃止となりました。

こういった事例は他にも無数にあります!
私の持ち株の事例
実は、TOBの解説をしている私も今まさにTOBの銘柄を持っています。
その銘柄は芝浦電子(6957)で、つい先日台湾の電子部品大手の「国巨(ヤゲオ)」から1株4300円でのTOBの発表がありました。
その発表後に株価は急騰し、今現在4,535円まで上がっています(2025年2月7日終値)。
私の平均取得単価は3,230円なので、40%ほどの上乗せとなっています。

ただ、芝浦電子の同意はない敵対的TOBみたいなので、TOBが無事成功するかはまだわかりません。
保有株がTOBになったら?対応方法と注意点を解説

自分が保有している株がTOBの対象になった場合、基本的には以下の3つの選択肢があります。
- TOBに応募する:買付価格で株式を売却する。
- 市場で売却する:市場の株価で株式を売却する。
- 売却しない:TOBに応募せず、市場でも売却せず、そのまま株式を保有し続ける。
それぞれ以下で解説していきます。
1. TOBに応募する:買付価格で株式を売却する
TOBに応募すると、公表された買付価格で株式を買い取ってもらえます。
通常、買付価格は市場の株価よりも高く設定されることが多いので(TOBプレミアム)、利益を得られる可能性が高いです。
TOBへの応募のメリットとデメリットは以下の通りです。
- 市場価格よりも高く売れる可能性が高い
- まとまった株数を確実に売却できる
- 応募期間が限られている
- 応募手続きが必要(証券会社によって異なる)
- TOBが不成立になった場合、売却できない
TOBに応募する際の注意点
TOBに応募する際は、以下の点に注意しましょう。
- 応募期間
応募期間内に手続きを完了させる必要があります。 - 応募方法
証券会社によって手続きが異なる場合があります。基本的にウェブサイトで応募手続ができます。 - 税金
株式の売却益には税金がかかるため、確定申告等が必要になる場合があります。 - TOBの撤回・変更
一定の条件の下で、撤回されたり、買付価格や期間などが変更されたりする可能性があります。
最新情報を確認しておきましょう。

TOBが発表されたら、応募期間や応募方法等について早めに確認しておきましょう。
2. 市場で売却する:市場の株価で株式を売却する
TOBが発表されると、通常、株価は買付価格に近づく形で上昇します。
そのため、市場で売却しても、TOBに応募するのと同等、あるいはそれ以上の利益を得られる場合があります。
市場で売却する場合のメリットとデメリットは以下の通りです。
- TOBの応募期間や手続きを気にせず、いつでも売却できる
- TOB価格よりも株価が上昇した場合、より高い利益を得られる可能性がある
- 株価は常に変動するため、売却タイミングによっては損をする可能性がある
- 大量の株を一度に売却しようとすると、株価が下落する可能性がある

例えば、自分の芝浦電子の場合、買付価格が4,300円なのに対して、現状の株価は4,535円となっているので、市場で売買した方がお得になりますね。
3. 売却しない
TOBに応募せず、市場でも売却せず、そのまま株式を保有し続けることも選択肢の一つです。
ただし、TOBの結果やその後の企業の状況によって、株価や株主としての権利が大きく変動する可能性があることを理解しておく必要があります。
特に、配当金を目当てに投資している場合、TOBの後に経営陣の入れ替わることで配当金額や還元方針が変わる可能性が十分にあることは頭に入れておきましょう。
TOBになっても株を売却しないメリットとデメリットは以下の通りです。
- TOBが成功し、買収によって企業の業績が向上した場合、株価がさらに上昇する可能性がある
- TOB後も、株式を保有し続ける限り、株主としての権利(配当を受け取る権利、株主総会での議決権など)を維持できる
- TOBへの応募など煩雑な手続きは必要ない
- TOBが不成立になった場合、元の水準、あるいはそれ以下に下落する可能性がある
- TOBが成功しても、買収後の経営がうまくいかなかった場合、株価が下落する可能性がある
- 上場廃止になった場合、金銭交付の手続きが必要になる
売却しない場合の注意点
TOBの際に応募や市場での売却をせず保有し続ける場合は、以下の点に注意が必要です。
上場廃止にならない場合は、今まで通り株式を保有できます。しかし、状況によって株価が大きく変動する可能性があるため注意が必要です。
上場廃止の場合は、証券取引所で売買ができなくなり、多くの場合にスクイーズアウト(買付者による強制的な株式取得)が行われ、保有株式は現金と引き換えになります。
また、上場廃止後に金銭交付の手続きが必要になり、その場合は他の株取引との損益通算ができず、確定申告が必要となってくるため注意が必要です。

つまり、上場廃止になると株式を強制的に買い取られて手続き等が発生するのです。
株式投資にTOBを取り入れるヒント

では、最後にTOBを活用した投資方法について考えてみたいと思います。
そもそも、TOB銘柄を事前に予測することは可能?
TOBを事前に完全に予測することは難しいです。
しかし、以下のような企業はTOBの対象になりやすいと考えられています。
- 業界再編が進んでいる企業
- 株価が割安な企業
- 現金を多く保有している企業
- 大株主が売却を検討している企業
高配当株銘柄を選定する際に②や③を特に注視している人も多いため、自然にTOBの可能性のある銘柄を買っている場合も少なくないでしょう。

自分も全く予想していなかった芝浦電子が、今回TOBになりましたからね。
TOB活用投資戦略:TOB発表後の株価変動を利用して儲ける
TOBを活用して株式投資で儲けるための戦略として、以下の2つが挙げられます。
- TOB発表前に仕込む:TOBが予想される銘柄を事前に購入しておき、TOB発表後の株価上昇を狙う。
- TOB発表後に売買する:TOB発表後の株価変動を見て、売買のタイミングを判断する。
①については、先ほど上述したTOBになりやすそうな銘柄を買っておくことで、大きな株価上昇益を狙う方法です。
②については、TOBが発表されてからいち早く仕込んで、その差額を儲ける方法になります。
どれだけ早くTOBの情報を手に入れ、そのTOBの成立や状況を鑑みて、仕込めるかが肝になるでしょう。
ただし、これらの戦略にはリスクもあります。
TOBが成立しない場合や、株価が予想通りに動かない場合もあることを理解しておきましょう。

なので、経験豊富で株式投資に熟知していない方がやろうとすると損をする可能性もあるので、あまり初心者向きとは言えなさそうです。
TOB情報をいち早くキャッチするには
TOB情報は、以下の方法で入手できるので、上述した②の「TOB発表後の取引で儲けたい」方は、チェックしておくと良いでしょう。
- 企業のIR情報:企業のウェブサイトで公開されます。
- 証券会社のニュース:証券会社のウェブサイトや取引ツールで確認できます。
- 新聞やニュースサイト:経済ニュースをチェックしましょう。

ただし、TOBが失敗に終わる可能性も考慮に入れて、注意して行うようにしてください。
まとめ:TOBは大きく儲けるチャンスだがあまり気にしなくてOK
今回は、TOBの基本的な知識やTOBが発表された場合の対応についてお伝えしました。
TOBは市場の株価よりも大きく高い価格で買い付けが発表される場合も多く、儲けるチャンスでもあります。
ただし、TOBを予測することが難しいこと、TOB発表後でも損をする可能性があることなど、これを活用した投資戦略は初心者にはあまり向かない投資と言えるでしょう。
手堅く優良な銘柄の株を買っておき、それがTOBされればラッキーぐらいに捉えておくと良いかと思います。

私も、今回芝浦電子がTOBされることになったのは、ラッキーでした。
引き続き株式投資で資産を形成するために、励んでいきましょう!
コメント