「自社株買い」って聞いたことありますか?
最近、ニュースや経済記事でよく見かけるけど、実際どんな仕組みで、株価にどう影響するのか、よくわからない…という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、株式投資初心者の方にもわかりやすく、「自社株買い」の基本から、株価への影響、メリット・デメリット、投資判断のポイントまで、徹底解説します。
「自社株買いって、結局買いなの?売りなの?」
「どんな企業が自社株買いをするの?」
「自社株買いのリスクは?」
そんな疑問を、解決していきましょう!
自社株買いってなに? わかりやすく解説!

自社株買いとは、企業が自社の発行済み株式を市場や株主から買い戻すことを指します。

文字通り、市場に出回っている自社の株式を買う行為ですね。
買い戻した株をどうするか
自社株買いによって買い取戻した株は、消却されるか金庫株になります。
消却とは、買い取った株式を無効にすることで、発行済株式総数が減少するため、1株あたりの価値が上昇します。
金庫株は、企業が保有し続ける自社株のことで、将来的に従業員への報酬やM&Aなどに活用することができます。

買い戻された自社株は、一般的には消却(無効)されることが多いです。
企業が自社株買いを行う目的は?

企業が自社株買いを行う主な目的は、以下の4つです。
- 株主への還元
- 株価の上昇
- 財務体質の改善
- 買収の防衛
それぞれ解説していきます。
自社株買いの目的①:株主への還元
株主への還元という目的が、企業が行う自社株買いの最もよくある理由です。
自社株買いをすると、市場に出回る株式数が減ります。
すると、1株あたりの利益分配が増加し、株主への利益の還元強化につながります。
自社株買いの目的②:株価の上昇
自社株買いによって、企業の収益性を把握する指標の中で重要な「EPS(一株あたり純利益)」が改善します。
それに伴いROE(自己資本利益率)の上昇やPER(株価収益率)の低下が起こります。
それらの指標の変化により、投資家からの評価が変わり、より多くの注目を集めることで株価の上昇につながる可能性があるのです。
さらに、自社株買いによって市場に出回る株式数が減ることで需給の改善や買い圧力が増し、株価を上昇させる効果も期待できます。


自社株買いの目的③:財務体質の改善
企業が配当金を出している場合など、自社株買いによって財務の改善が期待できます。
発行済み株式数が減ることで、一株あたり配当金は同じでも、企業が支払う配当金総額は減少します。
その分、内部留保として利益を溜め込むことも可能であり、その結果、自己資本比率の改善など財務状況が改善することにつながります。
例えば以下のような感じで数値が変化します。
自社株買い前 | 自社株買い後 | |
---|---|---|
発行済み株式数 | 100万株 | 95万株 |
1株配当金 | 100円 | 100円 |
配当金総額 | 1億円 | 9,500万円 |

上記の例だと500万円ほどの節約ですが、企業規模によっては億単位の削減になることもあります。
自社株買いの目的④:買収防衛
他社からの買収の防御策としても、自社株買いが行われる場合もあります。
他社に自社の株式を大量に買い占められると、経営権を奪われるリスクがあります。
自社株買いをすることで、市場に出回る株式数を減らして株価を上昇させることで、買収されにくくすることができます。

これら4つの目的以外にも、ストックオプション(役員や従業員に自社株を一定の価格で購入できる権利)を付与する際に、あらかじめ自社株を買い付けておく場合もあります。
自社株買いの方法は2種類!

自社株買いには、主に「市場買付」と「公開買付(TOB)」の2つの方法があります。
市場買付
市場買付は、証券取引所を通じて、通常の株式取引と同じように自社株を買い付ける方法です。
企業は、証券会社に依頼して、市場の株価を見ながら少しずつ買い集めます。
公開買付
公開買付(TOB)は、期間、価格、株数をあらかじめ公表し、市場外で不特定多数の株主から株式を買い付ける方法です。
通常、市場価格よりも低い価格で買い付けられます。

他社を買収する際にも用いられる方法であり、それと区別して自社株TOBとも呼ばれます。

自社株買いは株価にどう影響する?

企業が自社株買いを行うと、その企業の株価に影響します。
ここでは、短期的な株価への影響と長期的な株価への影響について見ていきたいと思います。
自社株買いの影響①:
短期的な株価への影響
自社株買いの発表後、短期的には株価が上昇する傾向があります。
これは、企業が自社の株価が割安だと判断し、買い支えを行うというメッセージとして市場に受け止められるためです。
また、需給面から見ても買いが増えるので株価上昇に繋がりやすいとされます。
自社株買いの影響②:
長期的な株価への影響
一方で、長期的に見ると、自社株買いが必ずしも株価上昇につながるとは限りません。
それは、長期的には企業の業績や成長性、市場環境など、さまざまな要因が株価に影響を与えるためです。
つまり、長期的な目線における自社株買いの株価への影響は限定的であり、むしろその企業の業績がより影響すると言えます。
とはいえ、定期的に自社株買いを行なっている企業の株価は安定していたり、上昇傾向にあったりします。
これは自社株買いそのものに加え、自社株買いを行えるほどの利益を上げている、財務がしっかりしていることなどが投資家に好感されることが背景としてあげられます。

長期的に見ると、やっぱり企業の業績が一番大事です。
【実例】自社株買い発表における株価への影響
最近自社株買いを発表した具体的な企業の株価の変動についてみてみましょう。
自社株買い発表で株価上昇したKDDI株式会社
2024年11月1日にKDDI株式会社は以下の内容で自社株買いを発表し、その後株価が上昇しました。
- 2,800万株の取得を上限
- 総額1,000億円
- 期間は2024年11月5日〜2025年3月24日
この発表後の株価の動き(日足)はこんな感じです↓

11月1日の発表後にぐんぐんと株価が上がっているのがわかるかと思います。
その後は停滞や上下を繰り返していますが、短期的に株価が上昇していることはおわかりいただけるかと思います。
自社株買い発表後も株価停滞の武田薬品
一方で、2025年1月31日に以下の内容で自社株買いを発表した武田薬品の株価は低迷を続けています。
- 2,850万株の取得を上限
- 総額1,000億円
- 期間は2025年2月17日〜2025年5月31日
発表から本日(2月18日終値)までの日足の株価推移は以下のとおりです。

先ほどのKDDIとは異なり、自社株買い発表の翌日も下げており、その後も上昇基調ではないことがわかります。

このように自社株買いを発表しても株価上昇に繋がらないケースもあるようです。
その理由は色々と考えられますが、業績や先行きの不透明感が強く投資家が積極的に買うに至っていないのではと考えています。
また、武田薬品による買付が2月17日から始まっているので、ここから少しずつ上昇していく可能性はあるので、注目ですね。
自社株買いのメリット・デメリットを徹底解説!

自社株買いは、企業にとっても株主にとってもメリットとデメリットがあります。
それぞれ見ていきましょう。
企業側の自社株買いメリット・デメリット
自社株買いを行う企業側のメリットとデメリットは主に以下のとおりです。
- 株価上昇
- 経営の効率化: ます。
- 買収防衛
- 資金流出
- 株価下落リスク
メリットとしては、市場に出回る株式数の減少や1株あたりの価値上昇による株価上昇が期待できることが大きなポイントです。
そのほか、少数株主を減らし、経営の意思決定をスムーズにすることができたり、敵対的買収のリスクを減らすことができたりすることもメリットでしょう。
一方、デメリットとしては、自社株買いには多額の資金が必要となるため、手元資金が減少します。
また、自社株買い後、業績が悪化すると、株価がさらに下落する可能性がある点もリスクであり、デメリットと考えられます。
株主側の自社株買いメリット・デメリット
一方の株主側から見た自社株買いのメリットとデメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- 株価上昇
- 配当金増加
- 売却益
- 株価下落リスク
まずは、企業側と同様に株価上昇の恩恵を受けられる可能性があることです。
そのほか、配当金総額が変わらない場合は配当金が増える可能性があり、また株価上昇に伴う売却益も狙えます。
デメリットはそこまでないものの、強いて言えば自社株買いが投資家に好感されなかった場合の株価下落リスクが挙げられます。

個人的には自社株買いは、企業よりも株主への恩恵が大きいイメージです。
自社株買いの注意点

自社株買いは、必ずしも株価上昇につながるわけではありません。
また、自社株買いは基本的には投資家から好感されることですが、以下の場合に注意が必要です。
①業績悪化時の自社株買い
業績が悪化している企業が自社株買いを行う場合、株価対策としての一時的な効果は期待できますが、根本的な解決にはなりません。
むしろ、資金を無駄遣いしていると判断され、株価がさらに下落する可能性もあります。

また、手元の資金流出により財務状況が悪化するリスクも考えられます。
②過度な自社株買い
企業が過度な自社株買いを行うと、成長投資に回す資金が不足し、将来の成長を阻害する可能性があります。
どれくらいの頻度で自社株買いが行われているのかや、投資に資金を回しているのかなども確認しておくと良いでしょう。
③借入金による自社株買い
借入金によって自社株買いを行う企業は、財務状況が悪化するリスクがあります。
あまり聞かないですが、借入金で自社株買いをする動きは、2014年あたりに活発化していた動きなようです。(参照:ダイアモンドZaiオンライン)
ただし、これを行うと金利負担が増加し、経営を圧迫する可能性があるため、注意が必要です。

まとめると、自社株買いが行われている背景や財務状況など総合的に見ることが大切になります。
自社株買いは買い時?株式投資に取り入れる5つのヒント

自社株買いは、株価上昇が期待できるものの、必ずしも「買い」のサインとは限りません。
自社株買いを投資判断に用いる場合は、以下の点に注意しておきましょう。
自社株買い発表後の株価変動に注目!
自社株買い発表後、株価がどのように変動するかを注意深く観察しましょう。
市場が好感して株価が上昇するのか、それとも反応しないのか、あるいは下落するのか。市場の評価を見極めることが大切です。
企業の財務状況もチェック!
自社株買いを行う企業の財務状況を必ず確認しましょう。
手元資金が潤沢で、借入金が少ない企業は、自社株買いをしても財務基盤が揺らぎにくいです。
長期的な視点も忘れずに!
自社株買いは、短期的な株価上昇を狙うだけでなく、長期的な視点も重要です。
企業の成長戦略や将来性を見極め、長期保有に値する企業かどうかを判断しましょう。

沈みゆく船には、身を守るために乗らないのが一番です。
高配当株投資の視点:配当余力と株主還元姿勢に注目!
高配当株投資を目的とする場合は、自社株買いに加えて、配当余力と企業の株主還元姿勢に注目しましょう。
- 配当余力
利益剰余金やキャッシュフローが潤沢な企業は、将来的に増配や自社株買いを行う可能性が高いと考えられます。 - 株主還元姿勢
配当性向や、過去の配当実績、自社株買いの実績などを確認し、積極的に株主還元を行っている企業を選びましょう。
自社株買いは、1株あたりの利益(EPS)を増加させるため、理論上は配当金の増額にも繋がりやすいです。
ただし、企業が自社株買いで得た利益を、必ずしも配当に回すとは限りません。
企業の配当方針や、過去の増配実績なども合わせて確認することが重要です。

まとめ|自社株買いを理解して株式投資に活かそう!
自社株買いは、企業から株主への利益還元の1つであり、市場に好感されて発表後に株価が上がるケースがよく見られます。
しかし、自社株買い=株価上昇とは限りません。
企業の財務状況や成長戦略、市場環境などを総合的に判断し、賢く投資に活かしましょう!
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