先日1月13日(火)に竹内製作所の2026年2月期第3四半期決算が発表されました。その翌日、株価は8%超の急落しました。
今回は、その理由と考えられる決算内容を詳しくみていきます。
ちくわくん竹内製作所は、ミニショベルや油圧クローラーローダなどの小型建設機械を製造・販売するメーカーです。欧米を中心にグローバルに展開しています。
売上は増収を維持するも、為替・関税・人件費増により営業利益は前年比△7.0%。ただし利益進捗率は80%超と高水準で、通期計画達成は射程圏内。
特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。
決算ハイライト
2026年2月期第3四半期累計(2025年3月〜11月)の主要業績は以下の通りです。
| 項目 | 今期実績 | 前年同期比 | 通期計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,728億円 | +3.9% | 2,230億円 | 77.5% |
| 営業利益 | 314億円 | △7.0% | 380億円 | 82.7% |
| 経常利益 | 329億円 | +1.6% | 373億円 | 88.2% |
| 純利益 | 235億円 | +0.4% | 264億円 | 88.9% |
売上高は+3.9%と増収を維持していますが、営業利益は△7.0%と減益になっています。一方で、経常利益・純利益は前年並みを確保しています。
この「営業減益なのに純利益は維持」という構図は、為替差益が効いているためです。本業の稼ぐ力(営業利益)は低下しているものの、円安による為替差益が下支えしている状態と言えます。個人的には、為替に依存した利益構造は持続性に不安が残るため、営業利益の回復が今後の注目ポイントだと考えています。
業績の進捗状況
通期計画に対する第3四半期時点での進捗率を示します。Q3時点の標準的な進捗率は75%です。
| 項目 | 進捗率 | 評価 |
|---|---|---|
| 売上高 | 77.5% | 順調 |
| 営業利益 | 82.7% | 好調 |
| 経常利益 | 88.2% | 好調 |
| 純利益 | 88.9% | 好調 |
売上高の進捗率77.5%は標準をやや上回る程度ですが、利益項目は軒並み80%を超えています。特に純利益は88.9%と、Q3時点で9割近くに達しています。
つまり、残り3ヶ月(Q4)で純利益は約29億円を稼げば通期計画達成となります。Q3単体で見ても四半期あたり約78億円の純利益を出しているので、計画達成はほぼ確実と言えるでしょう。むしろ上振れの可能性すら感じる進捗率です。
ちくわくん営業利益が△7.0%減益なのに、純利益進捗が89%近いのは違和感がありますよね。これは為替差益が経常利益以下を押し上げているからです。逆に言えば、円高に振れた場合は為替差損で純利益が下振れるリスクもある点は頭に入れておきたいところです。
セグメント別分析
竹内製作所は日本・北米・欧州・中国の4地域でセグメント開示しています。各地域の業績は以下の通りです。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 10億円 | △31.4% | 22億円 | △24.2% | 低調 |
| 北米 | 985億円 | +1.2% | 156億円 | △23.9% | やや低調 |
| 欧州 | 688億円 | +6.2% | 131億円 | △2.6% | 堅調 |
| 中国 | 29億円 | +44.8% | 4億円 | +3.3% | 好調 |
出典:竹内製作所 2026年2月期第3四半期決算短信
売上構成比で見ると、北米が約57%、欧州が約40%を占めており、この2地域で売上の97%を稼いでいます。北米は売上+1.2%と微増ながら、利益は△23.9%と大幅減益。欧州は売上+6.2%増収で利益は△2.6%と微減にとどまっています。
ちくわくん注目すべきは、全セグメントで営業利益が前年比マイナスまたは微増という点です。売上は伸びているのに利益が伸びない——これはコスト増(為替・関税・人件費)が売上成長を上回るペースで進んでいることを意味します。
日本(低調)
売上△31.4%、利益△24.2%と大幅減。生産台数の減少が主因です。ただし売上構成比は1%未満なので、全体業績への影響は限定的です。
北米(やや低調)
売上は985億円と最大市場で微増を維持しましたが、利益は156億円(△23.9%)と大きく落ち込みました。住宅市場の停滞感、人的資本への投資(賃上げ)、為替影響、関税コストが利益を圧迫しています。
売上は伸びているのに利益率が悪化している典型的なパターンです。価格転嫁が追いついていない可能性があり、今後の注視が必要です。
欧州(堅調)
売上+6.2%と着実に成長し、利益も△2.6%と小幅な減益にとどまりました。北米と比較してコスト増の影響を抑えられており、相対的に健闘しています。
中国(好調)
売上+44.8%、利益+3.3%と唯一の増収増益セグメントです。規模は小さい(売上構成比2%未満)ものの、回復基調にあることはポジティブな材料です。
営業利益の増減要因
営業利益が前年同期比で約24億円減少した要因の内訳です。
| 要因 | 影響額 |
|---|---|
| 販売台数増加・構成差 | +27億円 |
| 為替影響 | △25億円 |
| 関税コスト | △11億円 |
| 人的資本への投資 | △7億円 |
販売台数の増加と製品構成の改善で+27億円のプラス効果がありましたが、為替(△25億円)、関税(△11億円)、人件費(△7億円)といったコスト増がそれを上回り、結果として営業減益となっています。
ここで重要なのは、「本業の販売活動自体は好調」という点です。台数増・構成改善で27億円のプラスを出せているのは、製品競争力が維持されている証拠です。問題は外部環境(為替・関税)と先行投資(人件費)によるコスト増であり、これらは一過性または将来への投資という側面もあります。
ちくわくん人的資本への投資(△7億円)は、賃上げや人材確保のためのコストです。短期的には利益を圧迫しますが、人材確保が難しい製造業では必要な投資とも言えます。関税コスト(△11億円)も含め、これらを価格転嫁できるかが今後の利益率回復のカギですね。
配当・株主還元
高配当投資家にとって最も重要な配当予想の状況です。
| 項目 | 今期予想 | 前期実績 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 年間配当 | 210円 | – | – |
| 配当性向 | 36.7% | – | – |
配当予想は210円(期末一括)で変更ありません。通期EPS予想571.44円に対し、配当性向は約36.7%です。
配当性向36.7%は「還元と内部留保のバランスが取れた水準」と言えます。一般的に30〜50%が適正とされる中で、増配余力を残しつつしっかり還元している印象です。純利益進捗率が89%と高いことを考えると、通期で上振れた場合に増配発表の可能性も十分あると見ています。
ちくわくん営業利益は減益ですが、純利益は維持されており配当原資は確保できています。自己資本比率も82%超と財務は鉄壁なので、減配リスクはほぼないと考えてよいでしょう。
通期見通し
会社が発表している通期業績予想と、その前提条件です。
| 項目 | 通期予想 | 修正 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,230億円 | 変更なし |
| 営業利益 | 380億円 | 変更なし |
| 経常利益 | 373億円 | 変更なし |
| 純利益 | 264億円 | 変更なし |
通期業績予想に修正はありません。
業績の為替前提は、以下の通りです。
| 通貨 | 会社前提 |
|---|---|
| 米ドル | 140.00円 |
| ユーロ | 164.00円 |
会社の為替前提は1ドル=140円ですが、Q3までの実績レートは円安水準で推移していました。第4四半期も円安が続けば、為替差益による上振れ余地があります。一方、急激な円高に振れた場合は下振れリスクとなります。
利益進捗率が80〜89%と高水準であることを踏まえると、よほどのことがない限り通期計画は達成できると見ています。むしろ保守的な会社予想であり、着地は上振れる可能性の方が高いのではないでしょうか。
ちくわくん為替前提140円は相当保守的です。直近の為替水準(150円前後)を考えると、会社はかなりバッファを持たせていますね。これは「予想を下回るリスクを避けたい」という経営姿勢の表れで、株主にとっては安心材料です。
財務状況
貸借対照表から見る財務の健全性を確認します。
| 項目 | 当Q3末 | 前期末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,152億円 | 2,177億円 | △25億円 |
| 自己資本比率 | 82.5% | 76.7% | +5.8pt |
総資産は25億円減少しましたが、自己資本比率は76.7%→82.5%へ大幅に上昇しています。棚卸資産が増加した一方で、現預金や売掛金が減少したことが総資産減の主因です。
自己資本比率82.5%は製造業としては極めて高い水準です。一般的に製造業では40〜50%あれば健全とされる中、80%超えは「財務鉄壁」と言っても過言ではありません。借入依存度が低く、不況時にも耐えられる財務基盤があると判断できます。
ちくわくん自己資本比率が前期末から+5.8pt上昇しているのは、利益の積み上げで純資産が増えた一方、負債が減少したためです。財務の健全性がさらに高まっているのは、高配当投資家として安心できるポイントですね。
受注状況
将来の売上を占う先行指標として、受注状況を確認します。
| 項目 | 当Q3累計 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 受注高 | – | 増加 |
| 受注残高 | 415億円 | △49.5% |
受注高は前年同期比で増加していますが、受注残高は415億円と前年同期比△49.5%の大幅減少となっています。
受注残高の大幅減少は、来期以降の売上減少リスクを示唆しています。受注残高は「まだ売上に計上されていない確定受注」であり、これが半減しているということは、来期の売上が現在のペースを維持できない可能性があります。
ただし、建設機械業界は受注から納品までのリードタイムが短い傾向があり、受注残高の減少が即座に売上減に直結するとは限りません。次回の通期決算で来期ガイダンスとともに確認すべき重要ポイントです。
ちくわくん正直、この受注残高△49.5%は今回の決算で最も気になる数字です。今期の業績は問題なさそうですが、来期がどうなるか。通期決算で来期予想が出た際に、この受注減少がどう影響するか注視したいですね。
保有継続判断
今回の決算内容を踏まえ、継続保有の観点から評価します。
- 利益進捗率80〜89%と通期計画達成に向けて順調
- 自己資本比率82.5%と財務基盤が盤石
- 配当予想210円を維持、減配リスクは低い
- 中国セグメントが増収増益と回復の兆し
- 為替前提が保守的(140円)で上振れ余地あり
- 営業利益は前年比△7.0%と減益基調
- 北米の利益が△23.9%と大幅減少
- 受注残高が前年同期比△49.5%と大幅減少
- 関税コスト・人件費増の価格転嫁が課題
- 住宅市場の停滞が北米事業に影響
総合評価としては、個人的には「継続保有OK」です。
営業利益は減益ですが、為替差益で純利益は前年並みを維持しており、配当原資は確保できています。財務の健全性も極めて高く、減配リスクは低いと判断できます。
一方で、受注残高の大幅減少は来期以降の懸念材料です。今期の業績・配当は問題ありませんが、来期ガイダンスが出る通期決算では慎重に内容を確認する必要があります。現時点で売却を検討する材料はありませんが、「安心して放置」というよりは「注視しながら保有継続」というスタンスが適切でしょう。
今後の注視点
次回決算(通期決算)で確認すべきポイントは以下の通りです。
1. 受注残高の動向と来期ガイダンス
今回のQ3時点で前年同期比△49.5%と大幅減少となっており、来期売上予想にどう反映されるかは見ておく必要がありそうです。
受注回復の兆しがあるか注視しておきたいですね。
2. 北米市場の回復
北米での住宅市場の動向や、関税コストの価格転嫁の進捗など、利益率の改善傾向が見られるかはみておいたほうが良いでしょう。
3. コスト増への対応
人的資本への投資(賃上げ)の継続性および、関税コストの吸収策は大切です。
こうしたコスト増をうまく販売価格へ転嫁できるかが勝負の分かれ目になりそうです。
4. 為替動向と影響
会社前提は、1ドル=140円とやや控えめです。今後も円安が続いて、1ドル=140円以上の水準が続けば良いですが、日銀による利上げ等で140円を割ってくると、業績下振れのリスクがあります。
5. 配当の最終決定
通期着地次第で増配するかどうかは、高配当株投資家にとっては重要です。
また、来期の配当方針もどういった内容になるのかはチェックしておく必要があるでしょう
ちなみに、足元では決算発表翌日に竹内製作所の株価が8%超の急落となりました。第3四半期決算の営業利益が前年同期比△7.0%減少したことや、受注残高が前年同期比△49.5%と大幅に減少したことが嫌気されたと見られます。
通期予想は据え置きで、一見すると大きな業績崩れはないものの、「受注残高の大幅減」や「営業減益」に警戒感が広がり、決算内容に対する市場の見方の厳しさが反映された形です。
まとめ:竹内製作所(6432)は利益進捗好調で通期達成は射程圏内
今回の決算のポイントを整理します。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 業績進捗 | ○ 利益進捗80%超で順調 |
| 営業利益 | △ 前年比△7.0%と減益 |
| 配当 | ◎ 維持(210円、配当性向36.7%) |
| 通期見通し | ○ 据え置き(達成可能性高) |
| 財務 | ◎ 自己資本比率82.5%で盤石 |
| リスク | △ 受注残高減、北米市場 |
| 総合判断 | 継続保有OK |
営業利益は減益となりましたが、為替差益により純利益は前年並みを維持。利益進捗率は89%近くと高水準で、通期計画達成の可能性は高いと判断できます。自己資本比率82.5%という財務の強さは、不透明な環境下でも安心材料です。
ただし、受注残高が前年同期比△49.5%と大幅に減少している点は要注意です。今期の配当は問題なさそうですが、来期以降の業績・配当については通期決算で来期ガイダンスを確認してから改めて判断したいと考えています。
現時点では売却を検討する材料はありませんが、「安心」よりは「注視しながら継続保有」が適切なスタンスです。

